ディベヒ語学習における国別需要調べ
2020年1月から2020年3月までの調査結果です。あくまで傾向として参考程度にお読み下さい。
1.目的
モルディブ渡航者数は、増加の一途を辿っている。リゾートでは英語をはじめとする観光客の母国語が通じるが、モルディブの公用語であるディベヒ語の需要も少なからずある。しかし、ディベヒ語に関する文献は非常に少なく、学習には困難が伴う。
思わぬことから、ディベヒ語に関心を持つ人のデータを取得したため、国別及び言語圏別に集計してみた。
2. 方法
(1) モルディブ観光省による2016年度モルディブ国別渡航者数リストの集計結果から、上位20か国の主要公用語を選択する。
http://www.maldives-resort.com/blog/2016arrival/
(2) ツイッターで、英語で書かれたディベヒ語会話帳及び辞書に関する情報を各言語で投稿した。
図1 各言語によるツイート(英語・北京語・スウェーデン語の例)
英語以外の言語は、google翻訳を用いた。但し、アラビア語はいい翻訳にならなかったため除いた。また、日本には日本語の文献が数冊あり、英語文献の需要がないと推測して除いた。マレー語はうっかり忘れた。
(3) 53日後、ツイート言語別に、ツイートアクティビティにてインプレッション数を集計する。ディベヒ語情報ツイート以外アクセス数の平均を差し引いた数を検索された数とし、53日間あたりのディベヒ語学習に関心がある人の数とする。
(4) 言語圏別ディベヒ語に関心を持つ人数と国別渡航者数から、言語圏別及び国別に需要率を求める。
3. 結果
3.1.言語圏別観光客数及び割合
モルディブ観光省による2016年度モルディブ国別渡航者数リストの集計結果から、言語圏別観光客数及びその割合を集計した。中国からの観光客が全体の1/4を占める。中国、英語圏及びドイツ語圏が全体の半分弱を占めている。
表1 言語圏別モルディブ観光客数及び割合
図2 言語圏別モルディブ観光客数
図3 言語圏別モルディブ観光客の割合
3.2.言語別アクセス数及び割合
53日間のディベヒ語に関する情報ツイートへの言語別アクセス数を集計した。一日当たりのアクセス数は、北京語が圧倒的に多く26%、次いでイタリア語及びロシア語がそれぞれ17%、スウェーデン語9%及びタイ語7%と続き、これらは英語の情報ツイートよりアクセスが多かった。
表2 言語別ディベヒ語に関する情報ツイートへのアクセス数
図4 言語別ディベヒ語に関する情報ツイートの検索によるアクセス数
図5 調査対象言語圏における言語別ディベヒ語に関する情報ツイートへのアクセスの割合
3.3.需要率
一日当たりのアクセス数から年間アクセス数を計算した。その値と年間観光客数の割合をディベヒ語学習における国別需要率と近似した。
スウェーデン語話者の年間観光客数に対する年間推定アクセス数の割合が5.11%と圧倒的に多く、次いでタイ語及びロシア語話者が、それぞれ2.43%と2.28%、イタリア語及びスペイン語話者が1.55%と1.27%と続いた。スウェーデン語、タイ語及びロシア語圏の上位3言語で、全体の約2/3を占めた。
表3 調査対象言語における言語圏別ディベヒ語情報ツイートへのアクセス数と割合
図6 調査対象言語における言語圏別ディベヒ語学習における需要率
図7 調査対象言語における言語圏別ディベヒ語学習における需要率
3.4.国別ディベヒ語学習における需要率
国別のアクセス数及び需要率を集計した。
表4 国別ディベヒ語情報ツイートへのアクセス数及び需要率
3.5.国別ディベヒ語学習における需要分析
国別における需要数及び需要率をグループ分けした。その結果、5つのグループに分けることができた。
グループ1 母数は少ないが、ディベヒ語に関心がある人の割合が比較的高い国
グループ2 母数が多いが、ディベヒ語に関心がある人の割合は少ない国
グループ3 母数は比較的多いが、ディベヒ語に関心がある人の割合は少ない国
グループ4 ディベヒ語に関心がある人の数も割合も少ない国
グループ5 ディベヒ語に関心がない国
表5 国別需要数及び需要率
図8 国別需要数と需要率
図9 ディベヒ語学習における国別需要数と需要率
4. 考察
国別モルディブ観光客数における順位とディベヒ語情報アクセス数の順位は、一致しなかった。中国人観光客が25%で、アクセス数も北京語の情報ツイートが26%を占めた。しかし、英語話者及びイドイツ語話者は、それぞれ第2位と第3位であったが、英語及びドイツ語の情報ツイートのアクセス数は、イタリア語、ロシア語、スウェーデン語、タイ語より下回った。
スウェーデン語とタイ語の情報ツイートへのアクセス数は、北京語のアクセス数の半分以下だったが、観光客数に対する割合は高く、スウェーデン語話者とタイ語話者だけで、今回調査した国のディベヒ語学習需要の半数を超えた。
割合としては少ないが、観光客数の多い中国、特に北京語話者のディベヒ語学習の需要が一番高かった。一方、観光客数は少ないが、ディベヒ語学習に興味関心が最も高い国がスウェーデンであった。次いで、タイ、ロシア、イタリア及びスペインでの興味関心が高かった。(スイスにおけるイタリア語話者の割合は8.2%と低いため、イタリア語話者の多くはイタリア人と近似する。)
アクセスがほとんどなかったヒンディー語話者及びタミール語話者は、英語がインドの公用語のひとつであり、富裕層インド人の多くが英語堪能のため、ディベヒ語に関する検索は最初から英語で検索している可能性がある。そのため、英語話者に含まれているかもしれないが、英語情報ツイートのアクセス数は多くないため、インド人のディベヒ語に対する関心は薄いと考えていいだろう。韓国語話者及びシンハラ語話者については、どちらの言語も韓国とスリランカに限定されるため、興味関心がない国民性と考えられる。
5. まとめ・感想
ツイッターで発信を試みたが、ツイッター普及率が各国で大きく違うと考えられる。今回の調査対象国におけるツイッター普及率及び普及数のデータは、見つからなかった。そのため、普及率の補正を加えていない。また、調査期間が53日間であったが、一年間のアクセス数のデータの方がよかっただろう。雨期乾期のシーズンによる渡航数の差が、ディベヒ語に関心を持つ時期に影響を与えている可能性もなくはない。さらに、観光客やアクセス数の1/4を占める中国人の旧正月などの休暇も、アクセス数に影響を与えているかもしれないからだ。また一年後に、アクセス数の集計をしてみるのもいいだろう。
今回は国別の需要と割合を調べただけだが、興味を持つ割合が高かったスウェーデン、タイ、ロシア及びイタリアの共通要因を割り出してみるのも興味深いだろう。データに、日本とサウジアラビアを加えられなかったことが残念である。個人的には、日本は該当グループがなかった「需要数も需要率も高い」領域にあるのではないかと考えている。
ディベヒ語学習に関心や興味がある人全てがツイッターだけで検索しているわけではないため、あくまでも傾向として考えてもらいたい。